睡眠の質にもつながる？運動不足が睡眠に与える影響について解説

運動が睡眠に影響を与える理由

まず、運動が睡眠に影響を与える理由について、ご説明します。

運動が体の中心部の体温を変化させる

運動は、体の中心部の体温を変化させます。運動中は体温が上昇し、運動後は体温が低下します。実は、この体温の低下は、眠りにつく前に起こる体温の変化と非常に似ていて、体温の変化が似ているということは、脳に「そろそろ寝る時間だ」という合図を送っていると考えられています。

運動がストレスを軽減させる

運動は、不安や抑うつの症状を和らげることが知られています。不安や抑うつと眠れないことは、密接に関係しています。不安でネガティブなことを考え続けること、心配事、ストレスなどの症状は、睡眠の妨げになるのです。

運動によって、エンドルフィンと呼ばれる幸福感をもたらすホルモンが分泌されることが知られていますが、エンドルフィンがこれらの不安に関係する症状を緩和し、睡眠の質を向上させられます。

運動が体内時計を調整する

体内時計のずれが原因で不眠症になる人もいますが、運動で体内時計を調整できます。概日リズムが乱れると、自然と通常より遅い時間に疲れを感じるのです。

運動する時間帯によっては、体内時計がリセットされ、早く眠りにつけます。さらに、ランニングのような運動はセロトニン（睡眠覚醒サイクルに関与するホルモン）を増加させ、セロトニンを代謝して睡眠を調節する脳の能力を向上させる可能性があります。

運動と不眠症の関係について

それでは続いて、運動と不眠症の関係についてご説明します。

運動不足は不眠症の原因となるか？

定期的な運動は、よりよい睡眠と関係があることが、複数の研究で明らかになっています。年齢層を問わず、定期的に運動している人は、不眠症や睡眠の問題を抱えている可能性が低いことがわかっています。

さらに、身体的に活発な人は、50歳代以降に不眠症を発症する可能性が低い傾向にあり、運動が不眠症に対する保護機能として作用していることが示されています。

逆に、運動不足は不眠症と関連しているのです。健康状態の悪化、精神的ストレス、加齢などの要因と並んで、運動不足は不眠症の原因となります。

問題は、不眠症に悩まされている人は、夜眠れないために日中の疲労度や眠気のレベルが高くなり、その結果、体を動かすことが難しくなることです。

運動は不眠症の原因になるのか？

では逆に、運動は不眠症の原因となるのでしょうか？一般的に答えはノーです。しかし、就寝時間が近づいてから運動すると、運動の結果不眠症になる人がいます。ただし、人によっては、運動をしてからすぐに眠りにつくことに問題がない人もいます。

また、一日のうちでも遅くまで運動をしていると、夜も眠れないという人もいるでしょう。これは運動によってエンドルフィンが分泌され、その結果脳が活性化されるため、人によっては気分が高揚することが影響していると考えられます。そのため、専門家はエンドルフィンの効果が切れる時間を見計らって、少なくとも寝る2時間前は運動を避けることを推奨しているのです。

ただし、運動後の体温低下は30～90分後にはじまることもあります。これは先述したように、入眠に効果があります。

不眠症に適した運動は

適度な有酸素運動は、不眠症の緩和にもっとも効果的であることがわかっています。実際研究者たちは、運動は睡眠薬と同じくらい、不眠症の緩和に効果があることを報告しています。

運動の選択肢は数多くありますが、ウォーキングのような強度が中程度の有酸素運動が、もっとも不眠症に対する効果があるといわれています。

ランニングやウエイトリフティングのような激しい有酸素運動や無酸素運動に、睡眠を改善する効果は認められていません。

運動が苦手な人は、ヨガなど体を激しく使わずに取り組める運動で十分です。具体的には、30分程度の運動を1回行うだけで、眠りにつくまでの時間が短縮され、全体的に長く眠れます。

しかもこれらの効果は、定期的に運動プログラムを実施すると、より強くなるのです。4週間から24週間までの期間、長期的に運動を行うと、不眠症の人は運動前よりも早く眠りにつき、睡眠時間が長くなり、睡眠の質が向上することが、これまでの研究で明らかになっています。

まとめ